●報告:第11回東京都形剣道大会

平成27年8月15日(土)於:東京武道館

●六・七段の部・・・・・・・・・伊藤 伸(花栗剣友会)

第11回東京都形剣道大会六・七段の部に打太刀:門野由紀子(花栗)、仕太刀:伊藤伸(花栗)で出場させて頂きました。昨年度に引き続き、このような貴重な機会を与えて頂いた大田区剣道連盟に深く感謝いたします。結果報告とともに個人的な感想を記載させて頂きます。
本大会に臨むに当たり、本年1月に行われた同大会にも参加させて頂きましたが、残念ながら入賞は出来ず、我々の不足な点の検討から始めました。多くの先生方からご助言を頂き、更に自分たちで動画を詳細にチェックして、大事な点をピックアップしました。御意見はあるとは思いますが、「緩急強弱を大きく示す。」「二人の動作を一致させ、体・刀のブレを無くす」「仕太刀の打突の決めを鋭くする。」「本当に切り合う様に間合いに入る。」こういった点に的を絞って、やるからには高い目標を持って稽古を反復しました。6月の大田区春季剣道大会では、刃引きで演武する機会を与えて頂き、この機会も大変良い経験となりました。特に小太刀の三本目での失敗は、今でも手に取るように覚えており、一瞬の大切さを身に染みて感じました。反省を糧に猛暑の中、お互い家族には少々?迷惑をかけましたが、少しでも時間を捻出して稽古を反復し大会に臨みました。
そして、大会当日です。2回目の出場ということもあり、大会の進行や雰囲気などが頭に入っていたため比較的冷静に試合に集中できました。本大会は2組が並んで演武を行い3名の審判の先生方による旗判定となります。我々の山場は2回戦、相手は江戸川区で、上位進出の常連です。残念ながら相手の演武は後からビデオで確認する事しかできませんので、その場では自分たちの演武に集中するしかありません。旗は割れましたが、何とか勝利を手にすることができました。ここからは少し気分が楽になった気がします。その後は幸いにも決勝進出を果たすことができました。決勝戦では、自分たちの持てる力は十分出し切りましたが、残念ながら警視庁のお二人には敵わなかったようです。
多くの方々のご協力があり、何とか結果を残すことができ、正直ホッとしています。剣道形の稽古は積めば積むほど、正直に結果が出てくるもの、稽古は嘘をつかないと実感しました。しかしながら、剣道に生かすことができて、初めて成果と言えますので、更に精進したいと思っています。僅かながらではありますが、私の体験が今後に出場される方々の一助となれば幸いであります。
追記させて頂きます。先日、池上支部の稽古で打太刀が私、仕太刀が門野先生で剣道形をさせて頂きましたが、逆になると難しいもので、大会だったら1回戦負けだねと反省いたしました。まだまだ修行の入り口のようです。
最後に豊村東盛先生、田中和明先生、岡本徹先生、鎌田幹雄先生をはじめ、御指導頂いたすべての先生方、関係者の皆様、私の無理なお願いを受け入れて頂いた門野由紀子先生に厚く御礼申し上げます。今後とも御指導の程宜しくお願い申し上げます。

●四・五段の部・・・・・・・・・三森望美(羽田少年剣道クラブ)

打太刀:中村はぎ乃(東競)、仕太刀:三森望美(羽少剣)
朝からじりじりと夏の日差しが照りつける中、会場に着くと、大田区からはるばるたくさんの先生方・先輩方が応援に来てくださっていて、初出場の緊張もどこかへいくほど、本当に心強かったです。1回戦の相手は西東京A。組み合わせを見た応援の方々が口をそろえて「西東京!西東京!」「第一試合だよ!相手は西東京!」と言っている。この形大会のために1年間かけて練習をし、優勝を狙いに来るという。しかし、幸いこの大会を見るのも、出場するのも初めての私にとっては全く実感が湧かず、「先に倒すも後で倒すも一緒。自分たちの形に自信をもって堂々と演じましょう!」なんて偉そうなことを言っていました。
試合場に入り、「はじめ!」の合図で試合が始まりました。形大会は相手チームと同時に演じるため、相手の力量・雰囲気が分からず、そういう点では普段の試合にはない不安にかられます。途中、自分たちの方が相手よりも速いテンポで進んでいることに気付き、一瞬「大丈夫か?」という思いがよぎりました。ペアであるはぎ乃先輩の目を見ると、同じことを思っているようで、お互いに(大丈夫。自分たちの形を信じて、最後まで演じきろう。)と目で会話をしました。7本目が終わり、相互の礼。(どうだったかなあ。)と期待と不安で胸が高鳴る中、「判定!」。白2本、赤1本、旗が挙るのが見え、心の中で絶叫しました。それほど、厳しい戦いに負けることなく、自分たちの形を信じて演じられたことが嬉しかったです。試合場の外に戻ると、大田区の皆さんが一緒になって喜んでくださり、さらに嬉しい気持ちになりました。
2試合目の相手は、警視庁。これまた毎年優勝している強豪とのこと。ただ私たちは、そういう相手の方が燃えるタイプの2人ですので、「自分たちの形の魅せ所は、勢いのある攻守。どんな相手でものびのびと美しく演じよう!」と気持ちを新たに臨みました。結果は、赤3本で負け。敗因は、7本目の胴を鋭く入り打った後の着膝で体勢が崩れてしまったことだと痛感しています。試合後にビデオを見ると、4本目・6本目はこちら側の方がよかったと確認でき、最後のあれさえなければ…と悔しい気持ちでいっぱいになりましたが、この大会の厳しさを身をもって感じることができました。

大会までを振り返って感じたことは以下の通りです。

①剣道形の大会は、1回のミスも許されない。
通常の剣道の試合だと、危ない場面があっても、もう一度試合を組み立て、流れを変えることができます。例え1本とられても、2本返すことで勝つことができる。しかしこの大会は違う。1回の間違いでも間違いは間違い。相手がミスすることでしか挽回できない。その厳しさに本大会の醍醐味があると思いました。
②剣道形を学ぶことは竹刀剣道にも生きる。
形を習う中で私が特に多く指導されたことは2つ。1点目は構える時、振る時に余計な力を抜くこと。2点目は、振り上げた時剣先が下を向かないようにすること。1点目については、強い攻めや速く振ろうとすると無意識のうちに力が入ってしまい、結果振りの速さは大してかわらず逆に見栄えが悪くなってしまう。自然体で、余計な力を抜くことで、体は速く反応し、無駄のない美しい形になることを学びました。2点目については、特に振り上げすぎている感覚はなかったのですが、竹刀の感覚で速く振ると木刀の重みで自然と剣先が下がってしまう。あれ?もしかしたら今まで自分は必要以上に振り上げていたのでは?————自分の剣道を見直すきっかけとなった新たな発見でした。また、大会の前週の練習試合で、素振りをしていると何となくいつもと振りが違う感じがし、振り上げが45度で止めようと無意識中に意識していることに気付いた。そしてその後の稽古で抜き技や担ぎ技を出すときも45度以上はいかないように意識したところ、抜ききれないことは全くなく、むしろ以前よりも軌道が短くなった分速く打てたのです。これも形は竹刀剣道に生きると思った経験です。
今、自分は剣道形の魅力に引き込まれ、ようやく剣道形を学ぶスタート地点に立ったのだと思っています。これから形を学ぶ中で、この他にもたくさんの竹刀剣道に生かすことのできる経験ができると思うとわくわくしますし、あの独特な緊迫した試合場にもう一度立ちたいと思っています。また形も竹刀剣道も表裏一体のもので、自分の悪い癖は形にも素直に出て、そこで課題にぶつかる。それを稽古して修正することで、実践にも生きる。どちらか一方では本物ではないのですね。今まで剣道形をないがしろにしていた自分がとても情けなく思えました。これからは両者を高め、自分の剣道を高めていきます。

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最後になりましたが、私が選手として出場し、強豪相手に勝ちを納めることができたのは、自分の振りを買って仕太刀に選んでくださり、最後まで丁寧にご指導してくださった豊村先生、島村先生、岡本先生、鎌田先生をはじめとする多くの先生・先輩方のおかげです。特に三森流ガタ形を見捨てることなく、剣道形の理合を1つ1つ丁寧に教え、剣道形の面白さに気付かせてくださった田中和明先生、本当に感謝しています。そして、忙しい中何度も羽田小に足を運んでくださり、私の良さを認め引き出してくださったはぎ乃先輩。はぎ乃先輩でなければ、自分はこんなに堂々と形を打つことはできませんでした。先輩とだから、緊迫した試合中でも落ち着いて演じきることができました。一緒に形が打てて嬉しかったです。本当にありがとうございました。
大会当日まで温かく応援してくださった大田区の皆さんへも心から感謝しています。皆さんの応援があって、自分は使命感を感じ、一層頑張ることができました。感謝いたします。今後も継続して形を学び、自分の形を通して剣道形の魅力を表現できることを目標に、精進いたします。ありがとうございました。

●参段以下の部・・・・・・・・・・信成義仁(鵜の木剣友会)
今回参段以下の部に打太刀;信成(鵜の木)、仕太刀:遠藤(矢口)ペアで出場させていただきました。大学生と高校生で部活動の時間の関係上、なかなかスケジュールが合わない中、私達は鵜の木剣友会や池上支部稽古会、矢口剣志会での稽古の場をお借りして練習してきました。
昨年この部では、大田区が準優勝したということもあり、シードとなっていたため2回戦からの出場でした。相手は、1回戦で自衛隊を破って勝ち上がってきた江戸川区でしたが、こちらと同じ学生ペアでした。私たちは、先生方にご指導いただいた事や、注意されたことに気を付けながら試合に臨みました。特に、気合や声では負けないように全力を出したつもりでしたが、残念ながら判定で1-2という結果で敗退してしまいました。
練習量が足りなかったのか、とも思いましたが、後日ある先生から、木刀の冴えが劣っていたとのご指摘をして頂いたので、今後そこを重点的に改善できればと思っております。今回、2人とも形大会に出場することが始めてであり、大田区の代表であることのプレッシャーからこのような結果となり、チームに貢献することができず申し訳なく思います。
今回の経験は、日本剣道形について改めて考え、より一層知識を深めることのできた良い機会でした。これからは、形の魅せ方、見られ方を意識し、竹刀剣道においても一本をきちんと魅せられるように日々精進していきます。
今回、島村先生・岡本先生・田中先生・鎌田先生など、諸先生方よりご指導いただき、ありがとうございました。

●報告:平成27年度指導者(審判)講習会

副理事長 入来院哲夫

秋季剣道大会に向けて審判の技術向上を図ることを目的に8月23日13時から16時まで出雲中学校において大田区剣道連盟主催の指導者(審判)講習会が開催されました。今回は審判技術向上により大会を盛り上げる意味も有り、大会に則して小・中学生担当の審判要員(三段~五段取得者)と一般を担当する審判員(六、七段取得者)の先生方にわかれて実施されました。
今回の講習会での大きな収穫は、小・中学生担当の審判要員が何回も実際の試合を審判して技術を学べた事です。これは午前中のジュニア強化だけでなく、午後の試合にも参加してくれた75名の小・中学生の貢献が大きいと言えます。緊張感のある試合を多く経験する事は講習受講の指導者だけでなく試合をした選手にとっても学ぶことが多かったと思います。
また講習会に参加すると受講者自身だけでなく関係する人々も受講者を通じて剣連の方針やそれらの指導方法などを知ることが出来るので全体的なレベルアップを図ることが出来ます。したがって是非多くの方に参加してほしいと思います。今後はさらに講習での習得を高めるために、事前に審判の所作などの基本的なことを学習して講習会に臨めるような仕組みにしていきたいと思っています。

今回の受講者内訳
三段:5名
四段:7名
五段:9名
六段:6名
七段:9名

●報告:東京都生涯スポーツ大会

中村はぎ乃(東競武道館)

去る9月6日(日)、東京都生涯スポーツ大会、いわゆる“熟女大会”が東京武道館にて開かれました。本大会は女子三人戦。先鋒は35歳以上40歳未満、中堅は40歳以上45歳未満、大将は45歳以上という、まさに今が旬の秋刀魚のような脂ののった美味しい?熟女たちで構成される熱い戦いです。(※4月1日時点の満年齢による。)
今回、大田区からは先鋒・中村(東競武道館)、中堅・川井(キヤノン)、大将・荻津(麦子 東競武道館)(敬称略)で臨み、優勝という結果を収めることができました。ちなみに、午前に行われた青年大会女子の部でも大田区が2連覇を果たしました。両方の大会で勝利するのは初の快挙だそうで、会場では他の地区の剣友から「大田区、強い!」「大田区、イイね!」「大田区、美女ばかり!」と、驚きと賞賛の声をたくさんいただきました(※一部誇張あり。)
以下、試合を振り返ってみたいと思います。

【予選リーグ】
4分3本勝負、引き分けあり。
対・昭島市戦:3(6)-0(0)で大田区の勝ち
対・杉並区戦:1(0)-1(0)で引き分け
大田区が杉並区に勝者数で勝り、決勝トーナメント進出。

【決勝トーナメント】
4分3本勝負、時間内に勝敗が決しない場合は、勝敗が決するまで延長戦。(ただしチームの勝敗が決まった後の大将戦は、その限りでない。)

<準々決勝>
対・中野区戦:3(4)-0(1)で大田区の勝ち

<準決勝>
対・多摩市戦:2(4)-1(1)で大田区の勝ち

<決勝戦>
対・世田谷区戦:3(3)-0(0)で大田区の勝ち。☺優勝!

予選リーグ、緒戦の昭島市には快勝したものの、杉並区と引き分けてしまいました。そして、麦さんが試合中に左足を痛めるというアクシデント。勝者数・総本数とも杉並区と同数になれば代表戦になり、そうなれば杉並区からは手強い相手が登場すると予想されたため、ちょっと重い雰囲気が漂いました。が、杉並区対昭島市戦の結果、大田区は杉並区に勝者数で勝り、予選リーグを突破することが出来ました。
個人的に、このリーグ戦が一番緊張しました。私は杉並区戦、格上の相手に対して、「無理に勝ちにいかなくても良い。負けても1本まで」という川井さんの指示通りに、とにかく4分間足を止めずに、的を絞らせないことだけを意識して試合をしました。何とか一本負けにおさえて「最低限の」仕事は出来ましたが、もしかしたら引き分けに持ち込めるかも、と思った終了間近に1本取られてしまい、自分の力不足を悔やみました。負けは負け、やはり悔しいです。かといって、無理に突進していたら2本負けしていた可能性もあったわけで、今思い出してもドキドキする試合でした。団体戦における1本の重要性を痛感した次第です。
さて、予選リーグで大きなヤマを越えることができたためか、その後の決勝トーナメントでは、すっきりとした気持ちで試合に臨むことができました。決勝トーナメントでは予選リーグと異なり、ルールはシンプル、引き分けなし。勝利の決するまで試合が続きますので、絶対に負けないというタフな気持ちが重要になってきます。
準々決勝では、3人とも勝つことが出来ました。とくにこの日、川井さんの技が冴えていて、絶妙な機会をとらえた技は見ていて非常に気持ちよく、頼もしく感じました。この準々決勝でも初太刀、鮮やかに小手抜き面を決めると、鎌田先生が「ねえさんすごいよ〜、天才!」と完全に脱帽、という感じで唸りました。もう目尻が下がりっぱなしです。私は川井さんの剣道にただただ感動していました。「甘い柿を取りたければ木を揺らしても無駄、熟した柿は自然と落ちてくる」という話を思い出しました。こんな風に剣道ができたら… 続く麦さんも勝利。テーピングを巻いて仁王立ち、左足の痛みはどこへやら、いつもの力強い麦さんに戻っていました。麦さんが敵じゃなくて本当に良かった…
つづく準決勝。去年の大田区は準決勝で敗れています。ここは絶対勝たなくてはならない、と心に期するものがありました。しかし休む暇もなく試合が続き、疲れも感じていました。余計なことを考えるだけで疲れてしまう、何も考えないように、シンプルにいこうと自分に言い聞かせて試合に臨みましたが、延長戦で不用意に下がったところを打たれて負けてしまいました。相手が強かったと言ってしまえばそれまでですが、打たれたところは私のミスです。自分の甘さが露呈した残念な試合でした。普段の稽古の取り組み姿勢が甘いから、試合にもそれが表れてしまったのだと深く反省しています。
ともあれ、私は自分が負けたくせに、チームの勝利を全く疑いませんでした。絶対川井さんが取り返してくれる、必ず麦さんは相手を蹴散らしてくれる、と先輩2人に絶対的な信頼をおいていました。麦さんは『こらっ、ハギノ!全然わかってないな、負けてくんな!』と内心怒っていたかもしれませんが…!?結果、予想(?)通り、川井さんは準々決勝と同様にファンタスティックな相面と余し小手を決めると、つづく麦さんも、相面、抜き面を決め、多摩市に勝利。決勝戦に進出しました。
決勝戦。麦さんが、ここで初めて檄を飛ばします。「(試合は)あと1回だから!」そして、お約束の「わかってんだろうな!?笑」も忘れずに。そうだ、あと1回、あと1回で終わるのだ… 疲労はピークに達していましたが、決勝の舞台に立てることの名誉と、このメンバーで戦えることの幸せ、そして応援してくれる方への感謝の気持ちでいっぱいで、ただ一本を取ることに集中できました。優勝が決まった時は、嬉しさよりも安堵の気持ちが先に来ました。ああ、よかった…これで美味しい酒が飲める…
今回の熟女大会は、本当に楽しいものでした。楽しいばかりでなく、「熟した」先輩2人とチームを組ませていただいたおかげで、自分の青さや未熟さを深く反省する良い機会にもなりました。打突の機会や一本の精度、メンタルコントロール等々、どれをとっても先輩方の足元にも及びません。頼れる熟女となるべく、一層稽古に精進する所存です。

最後になりましたが、常に笑顔で見守ってくださった鎌田監督をはじめ、大田区の先生方や会場で応援くださった皆様、本当にありがとうございました。今後もご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。